このLRPレーションの説明をする前に、まずはLRPの解説をしなければならないでしょう。
LRP(Long Range Patol)もしくはLRRP(Long Range Reconnaisance Patol)とは、ロングレンジは長距離、レコネッサンスは偵察、パトロールは巡回と言う意味から分かるように、長距離偵察を主任務とした部隊の事です。
ベトナム戦争時代、小規模ながら最も活躍した部隊の一つですが、グリーンベレーなどとは違い独立部隊ではなく、実戦経験豊富な戦闘部隊、特殊部隊から優秀な兵士を抽出した即席の特殊部隊でした。
主な任務としては航空爆撃の誘導、待ち伏せ、標的の補足など敵支配地域での高度な任務を遂行し、そのためベトナム戦争中のLRRPの死傷率は全特殊部隊でもトップと言われています。
部隊の性格上、一般的な編成としては2〜4名のアメリカ人兵士にARVN、モンタニヤードのスカウト(斥候員1〜2名)で構成され、ヘリコプターで本隊より離れたエリアに空輸された後、策敵、偵察に務めました。また非武装地帯(DMZ)を越えタイ、ラオス、カンボジアにも非合法ながら侵入する任務も行われていました。

小規模人数で長距離の移動を常としている彼らは、他の部隊とは装備も一線を画し、極力装備の軽量化に勤め、へルメットや防弾ベストは着用せずブッシュハットやバンダナを着用し、特殊軽量化を施したM16ライフルを携行するといった独特のスタイルを確立しました。
当然途中で補給は受けられないので、食料も自分たちで持ち運ぶ必要がありましたが、当時の携帯糧食であるMCIは非常に嵩があり、1食分が約2KGもあるため、数日分を持ち歩くのには余りにも重過ぎました。しかし当時はすでにフリーズドライ技術は実用化され、森林警備隊用に小型軽量な携帯食料が開発されていたため、それを応用した特殊な携帯食料が登場するようになります。それこそ今から紹介するこのLRPレーションなのです。
登場当時のLRPレーションはOD(深緑色)のパッケージでしたが、のちに焦茶色のパックに変わり、その後ベージュに変更されました。
ただし途中で微妙に袋の色や表記の仕方が異なるLRPレーションの存在も確認されています。
              (写真提供 カメ一等兵殿)
   

余談ですがベトナム戦争当時、やはりMCIに不満を持っていたある将校が、自腹で資金を出して沖縄の食品加工会社と直接交渉し、小型軽量なパック入り特殊レーションを作らせました。 これがまた隊員に好評で、のちに軍からも資金が出るようになり、一部特殊部隊ではそのパック入り軽量レーションが多く使用されることになりました。
その特殊レーションとLRPレーションが、現在のMREの基礎となっていくのです。
LRPの中身

まずは構成を見てみましょう。最初に目に付くのは厚紙で包まれたメインミールのフリーズドライパック。それとギッシリ詰まったアクセサリーパケットにスプーンとティッシュ。

軽量シンプルを目指して作られたLRPには無駄な物は殆ど無い・・かと思いきや、スプーンとアクセサリーパケットは必ず付属するようです。
アクセサリパケットは後に詳しく中身を確認するとして、一番特徴的なのがスプーンの存在でしょう。
実はスプーンが入っている糧食は世界的に見ても少なく、24時間分でパックされているヨーロッパの戦闘糧食でさえスプーンが入っているの国は稀です。
クラッカーやスプレッド類を省いてまでスプーンを入れるのは、どうやらアメリカのプライドですかね?
まあティッシュはなにかと使用範囲が広いので、これは省くことは出来ないでしょうが、、スプーンは使い回しではなく各々一回ずつ使い捨てにするのは、多分衛生上の問題でしょう。
アクセサリーパケットの中身

粉末ココア、粉末コーヒー×2、砂糖、クリーム、マッチ、コーンフレークバー、そして爪楊枝。

粉末ココアは素早くカロリーを摂取するのに非常に効果的だし、乾燥しているので軽量で、LRPの目的にかなう品目です。
またコーヒーは古くから士気を高めるのに効果的とされているので、2パックも準備されていました。ただし軽量化のためか砂糖とクリームは各々一個ずつ?
コーンフレークバーはエネルギーバーの元祖のような物で、不足しがちなミネラルを補給するのには効果的。
マッチもいざと言う時必要で、フリーズドライ食品を喫食可能状態に戻す時にお湯が必要なので、(実は水でもok)これで固形燃料に火をつけ、お湯を沸かすときに使うのでしょうか。
またタバコを吸ったりするときにも使うんでしょうね。

で、爪楊枝・・。これは後期方MCIに入っていた物と同じタイプだと思います。多分この一時期だけ採用されていたものでしょう。
LRPレーションとは小型軽量を主目的とした特殊レーションで、サイズはMREを二まわりほど小さくし、重量はわずか300g強
これは実にMREの半分以下!!。     今回入手した物は、多分70年代頃の物だと推測しています。
LRP単品の解説
メインミールは軽量化を目的としているため、軽くて嵩張らないフリーズドライを採用しています。中は完全真空パックなので、半永久的に食品を保存することが可能。
フリーズドライにされた食品は水分が無いため弾力を失い、乾いたスポンジのような状態です。そのためバックパックにぎゅうぎゅう詰めに押し込まれても大丈夫なように、簡易ではありますが厚紙で周りを保護してあります。
ちなみにフリーズドライは糒と違い硬くないので、水を加えなくてもそのまま食べることも可能!但し吸水が良いため唾液でなじませながら食べないと飲み込むことが出来ません。(喉に詰まるので飲み物必須)
LRPを基に開発されたMREも、最初はメインをフリーズドライで構成していましたが、フリーズドライは喫食に清潔な水を必要とすることから、現在のMREでは採用されていません。
しかし、軽量、コンパクトである事以外に「水分を含まないため凍らない」という特徴をフリーズドライは備えています。

そのためLRP以外に、寒冷地での使用を目的としたRCW(Ration Cold Weather)や、RCWとLRPを統合して新しく登場したMCW(Meal Cold Weather)などで、現在でも採用されています。
MCRのメインミールパックは、左写真中央のLRP(new)のパックを白くした物です。
今回紹介している70年?型LRPのアクセサリーパックの中身は、基本的に後期型MCIと似ています。
しかしコーンフレークバーはMCIにはありませんし、ココアはMCIの場合B−UNITに組み込まれていますので、アクセサリーパケットには入っていません。また塩やチューインガムなども省かれていますので、このアクセサリーパケットはLRP専用と言ってよいでしょう。
ココアパウダー
この一袋で1.5オンス入り
キャンティーンカップに約半分のココアが出来上がります。
粉末インスタントコーヒー TYPEU
キャンティーンカップ3分の1の量(8オンス)のお湯か水で溶かすこととなっています。
砂糖   6グラム入り
粉末クリーム(代用)4グラム入り
スプーン  
    MCIと同じ物
コーンフレークバー

クラスU レモン風味 1.5オンス
爪楊枝 
     ニッキの風味付き
ティッシュペーパー
紙マッチ
その他の付属品
フリーズドライミールの特徴
LRP試食レポート
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フリーズドライとは読んで字のごとく、凍らせて乾燥させた物です。 液体は気体に変わるときに熱を奪うことはご存知だと思いますが、逆に超低温で気圧を下げると、水分子を固体から気体に変える「昇華」という現象が起こります。
これは通常の「蒸発」とは違い乾燥による形態の変化(収縮・きれつ)がなく、ビタミンなどの栄養成分を維持したままフレッシュな状態で長期保存ができ、水や熱湯が侵入しやすいので、復元性・溶解性が非常よく、常温の保管が可能で、低水分であるため軽く輸送性が高いという特徴があります。