自衛隊戦闘糧食II(改善型)

 平成2年に軽包装糧食、いわゆる戦闘糧食II型が陸上自衛隊で正式に採用され、以来現在までに主食10種類 副食13種類 (途中で追加・廃止あり)が用意されて隊員に親しまれている。 戦闘糧食II型は主食パック2個に副食パック一個を1セットにして、それを1食分のメニューとして支給する、つまり1食で3つのパック支給する形をとってきたのだが、このような主食と副食をわざわざ別支給する形をとってきたのは理由があるのだ。 と言うのも主食の米飯は備蓄している間に固くなってしまうので、そのままでは食べられず、支給する前に一度加熱する必要がある。 だが、支給された直後はまだ温かかった米飯も時間が経てば冷えてしまうし、次第にまた固くなって行く。 厳冬期には凍ってしまう事さえある。 そんな冷えた食事が美味い筈も無く、これでは隊員の士気も下がってしまう。 これはどの国でも同じ問題で、戦闘糧食II型が登場した頃、すでに他国の糧食にはヒーターが付属する事が一般的になりつつあった。 無論自衛隊にも固形燃料が装備品として存在し、温める事が出来なくも無かったが、忙しい訓練のさなか、悠長に火を熾す余裕など無かった為、隊員の間でアイデアとして捨てカイロを利用した加熱方法が行われていた。陸上自衛隊でもこのアイデアを採用し、さらに加熱力を強化した簡易加熱剤が2000年頃に登場する。 その後さらに熱伝導の良い加水型の加熱剤も登場し、食事前にセットすれば熱々に加熱したご飯が食べられるようになったのだ。 つまりこの加熱剤を使用すれば、支給前に米飯だけ加熱して支給する必要もなくなり、また主食と副食も一度に温められる。 であれば主食と副食を分ける必要は無くなり、一袋に纏めておけば管理も支給も楽ではないか。  そこで主食と副食を1パックに収めようという考えが持ち上がる。
実は以前から正式な戦闘糧食が足りなくなった場合に民間企業が製造した簡易糧食を買い上げて訓練で使うことがあり、民間企業側も自衛隊のニーズに合わせた様々な糧食を用意していた。 それらは主食と副食のレトルトを一袋に纏め、真空パックする事で空気層を無くなくして熱の伝わりを良くし、外袋のままボイルすればそのまま支給出来てしまう、とても優れたものだった。 しかも米飯はトレー入りで食器を必要とせず、箸やスプーンまでもセットされているので、隊員の評判も良かったのだ。 

そして2003〜2004年ごろ、すでに採用されてから10年以上経過し、特に変化の無かった戦闘糧食を見直しつつ、メニューも大幅に見直す為に、今まで訓練用の糧食を納めてきたメーカーも加えて各社から提案されたメニューや容器などの様々な研究が始まった。 そして2005年7月、幾つかのメーカーが新メニューと新しい包装、食器などを加えた「改善検討器材」という試作品を作り、部隊での運用テストが始まったのだ。






この「改善検討器材」は大きく分けて二種類の器材がテストされた。 一つは今までのパック入り米飯2パックと副食数種類を一袋にまとめ、さらにトレーと箸もしくはスプーンなどをセットしたもの。 もう一つは米飯をパックではなくトレー入りにしてオカズ、スプーンと一緒に一袋に纏めた物。つまり民間企業が納入したものを発展させたもの。 どちらも真空パックで袋ごと加熱してから支給できるようになっている。

(ちなみにこの時テストされた改善検討器材には(長期)と書かれたものや(軽量型)などといったものもあった。

    


メニューは様々な物が用意され、実際に訓練などで喫食されることにより、隊員の嗜好調査、食べやすさ、その他運用に関わる全ての懸案事項が一つ一つクリアーされ、遂に2008年10月から 戦闘糧食II型 改善型 が採用される事となった。

戦闘糧食II型 改善型 メニュー表
陸上自衛隊 東北方面隊 ウェブサイトから抜粋)

献立一覧
番号 区分 和洋中 献立名 献立構成品 1食単位
カロリー
主食 副食 kcal
いわし野菜煮 白飯×2 いわし野菜煮 1,002
さば味噌煮 白飯
山菜飯
さば味噌煮 1,026
さんま蒲焼 白飯×2 さんま蒲焼
海苔
1,189
さんまピリカラ煮 白飯×2 さんまピリカラ煮
コーンスープ
1,060
かつおカレー煮 白飯
五目飯
かつおカレー煮 1,061
さばトマト煮 白飯
ドライカレー
さばトマト煮 1,065
ウィンナーソーセージ 小型乾パン ウィンナーソーセージ
ツナサラダ
1,116
昼・夜 肉団子 白飯
五目チャーハン
肉団子 1,100
やきとり 白飯
五目飯
やきとり 1,038
10 かも肉じゃが 白飯×2 かも肉じゃが
さばしょうが煮
1,040
11 とり野菜煮 白飯×2 とり野菜煮
炭焼きチキン
1,040
12 ポークソーセージステーキ 白飯
山菜飯
ポークソーセージステーキ 1,085
13 ビーフシチュー 白飯×2 ビーフシチュー
海苔
963
14 ウィンナーカレー 白飯×2 ウィンナーカレー
炭焼きチキン
1,170
15 チキントマト煮 白飯×2 チキントマト煮
コーンスープ
1,040
16 ハヤシハンバーグ 白飯×2 ハヤシハンバーグ
あぶり焼きチキン
1,100
17 野菜麻婆 白飯
ドライカレー
野菜麻婆 935
18 豚甘辛煮 白飯×2 豚甘辛煮 1,002
19 豚しょうが焼き 白飯×2 豚しょうが焼き 1,036
20 豚角煮 白飯×2 豚角煮
海苔
1,185
21 中華風カルビ 白飯
赤飯
中華風カルビ
ウィンナー
1,140
今回のメニューの特徴は、朝食と昼・晩飯メニューがハッキリ分かれており、全部で21種類ものメニューが用意されている事である。 つまり朝食7種 昼食と夕食をそれぞれ7種類のメニューを分ければ、丸々一週間は違うメニューを食べる事が出来るようになっている。 無論野菜類が少なく栄養バランスが悪いので、戦闘糧食だけで1週間過ごすのは無理であるが、 これだけ種類があれば飽きる事も少ないだろう。 もしかするとMREのように数年ごとにメニューの入れ替えもあるかもしれない。



さて、それでは改善型戦闘糧食の詳細を見てみよう。

国防色のパックに収められた糧食は、重量約 730gで コンパクトな割りにボリューム満点だ。



外パックにはメニュー名、内容品、納入者、賞味期限と納入年月が記載されているのみで、このパックのまま温める方法や注意事項などは書かれていない。

賞味期限は1年間なので、これは以前のII型糧食と変わらない。 
部隊での喫食試験時には長期保存用糧食も出回っていたが、正式採用版では長期保存は出来ないようである。



袋はアルミ層とポリエチレン層の積層で、丈夫で軽いが、手で簡単に開封する事が出来る。
内側が銀色なので熱エネルギーを反射し、多少の保温効果も期待できるだろう。

以前のII型は薄いポリエチレンパックのみであったが、アルミ層が加わった事により空気はもちろん光も完全に遮断している。



さらに脱酸素剤も入ってるので、食品やパッキング素材の品質劣化を極力抑えてくれる。






内容物の様子。


旧型に付属していた漬物や、粉末(フリーズドライ)汁物は残念ながら廃止され、期待したドリンク、甘味、アクセサリーも付属しない。





主食は全てトレー入り米飯で、五目飯やドライカレーなども用意されているが、圧倒的に白米の比率が高い。
内容量200g×2パックは、以前と同じ量である。

文字フォントが丸文字っぽいゴシック体で、なんとなく可愛い・・




副食のパックは明るいグリーンで、オーストリア軍レーションのパックの色に似ている。

ちなみに納入会社の「武蔵富装」は、訓練用糧食を納入していた頃から、このウインナーカレーをラインナップしており、定番メニューなのだ。


( ベルウインナーカレーのベルとは、 ベル食品工業製造と言う意味)



裏面には調理法や注意事項が書かれている。

世界広しと言えど、電子レンジでの加熱方が細かく記載されている戦闘糧食は日本くらいだろう。
戦場に電子レンジがあるのだろうか??




副食その2 炭焼きチキン
要するに「焼き鳥」で、品名にも「やきとり」と書いてあるのに、炭焼きを強調しつつ、チキンとハイカラを気取っているネーミングが素敵だ。



唯一の付属品であるスプーンは先割れ式だ。 学校給食の頃お世話になった人も多いだろう。
ただし形状的に突き刺す用途にはあまり向いていないと思われる。(滑り止め程度の機能だろう)
あまり鋭くすると外装を突き破ってしまうので、仕方ないのかもしれないが。


どのメニューも概ね同じような包装と容器になっており、重量やカロリーもある程度統一されている。


ただし、この改善型もまだ登場して間もない為、これから様々な改良が加えられていくそうだ。
今回紹介した物とはさらに違う形で進化していく可能性があるので、これからも目が離せない。

他の種類を入手する機会があれば、また新しい変更点が見つかれば追って紹介しよう。


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