缶で構成された長期保存可能な非常食の事を、自衛隊では戦闘糧食I型として区分しています。 この呼び名はレトルトパックで構成された軽包装糧食、(戦闘糧食II型)の登場した平成2年より分類上そう呼ばれるようになり、それ以前は単純に戦闘糧食、もしくは平常食と区別する意味で缶詰食と呼ばれていました。 隊員の間では今でも「カンメシ」と呼ばれています。
この缶詰タイプの戦闘糧食の歴史は古く、自衛隊では昭和29年に採用され、若干の変更を加えながら現在に至っています。
実はこの缶に主食である米を詰めたと言う事は画期的なことであり。それまでの旧軍で行われていた現地での飯盒炊飯という手間から開放されただけではなく、湿気で生米がカビると言う事も無く、腐った沼の水で米を炊かなくても済むようになった事は、どれだけ兵士の負担を減らす事になるでしょう。 もちろん火や煙により敵から存在がばれるという安全の面から考えても、計り知れないほどの恩恵があることは言うまでもありません。
旧海軍では昭和8年頃からご飯を缶詰として保存する方法を研究し、昭和13年に缶詰飯を採用、主に潜水艦給食として使われたようですが、あまり評判はよくなかったようです。
話を自衛隊の缶詰糧食に戻すと、現在までに自衛隊では9種類の缶飯メニューが開発、採用されましたが、現行メニューは主食飯缶及び乾パンが合計6種類 漬物缶が2種 副食缶が9種類で、これら主食及び副食3〜4缶を組み合わせて1食分としています。
缶の形状及び容量はあまり登場当時から基本的には変わらず、塗装がく、銀色の地金に黒のペイントにてメニュー及び材料、製造元が印刷されているだけでしたが、平成元年よりは国防色と呼ばれる深緑色で塗装されるようになりました。詳しくは自衛隊レーションの歴史を参照してください。
戦闘糧食I型 (2000年頃)メニュー表
メニュー1 乾パン オレンジスプレッド ソーセージ缶 メニュー2 白飯 たくあん まぐろ味付 鶏肉野菜煮
メニュー3 赤飯  たくあん漬  鶏肉もつ野菜煮   メニュー4 赤飯 たくあん漬 まぐろ味付 コンビーフベジタブル
メニュー5 とり飯 たくあん漬  牛肉野菜煮 メニュー6 とり飯  たくあん漬  ます野菜煮
メニュー7 しいたけ飯 福神漬 味付ハンバーグ メニュー8 五目飯  たくあん漬  牛肉味付け

主食缶は内容量が平均400gと2合強ほど量があり、この1食分で約1000Kcal程度の熱量を摂取できるようになっています。 通常演習では3日分(つまり9食)携帯することが標準規定になっていますが、1食分の平均重量が約780gと重く、9食分だと実に7Kg以上の重量になってしまいました。
基本的に配給されるメニューは糧食班が決めるため選ぶ事は出来ず、同じ部隊の中では皆同じ物を食べる事になります。
飯缶は1箱に24食入り、オカズ缶は1箱に48食入り、一つの箱の中に4個の缶切りが入っています。

(この缶切りは折りたたみ式で、飯缶の平一号缶が25個以上開けられるようになっています)

缶の外には「沸騰湯中にて約25分間以上加熱すれば、通常3日間は喫食できるが、食前にあたためればさらによい」と記載されていて、飯缶に関しては一度湯銭にかけられてから配給されるので、3日間はそのまま食べられるようになっています。ただし外気温にもよりますがそれ以上時間がたつと米のでん粉がβ化してしまい、蝋燭のように硬くて食べられなくなりますので、しばらく経った缶メシは喫食前に再加熱する事が必要になります。
なので実は北海道などでは厳冬期にこのカンメシは殆ど使われていません。 手元の資料によると、2つの飯缶を30分茹で、片方をタオルやシャツで包み雑嚢に入れた状態、もう片方を裸のまま放置し、北海道の冬季の平均的な気温マイナス20度に設定した冷蔵庫の中で時間と共に変化する中身の状態を観察した所、裸缶は45分で表面が零度に達し、1時間後にはマイナス4度で米はボロボロ下状態になり、2時間後には完全に凍結してザクザクした状態・・とても食べられる物ではなかったそうです。
タオルで包んだ方も多少はましだったものの、5時間を過ぎると中心部はマイナス2度となり、副食は水分が多いのでさらに凍結は早かったそうです。 これでは4晩にわたる厳冬演習ではとても食べられず、ある兵站補給幹部は「冬の北海道で使える携行食料は乾パンだけだ」と言い切ったそうです。
朝鮮戦争の記録でも「食料も凍り、なんとかストーブで温めても中には硬い氷の塊が残り、これを飲み込むと腹痛や下痢を起こした。厚着をしたものが厳冬の屋外で、戦闘中に下痢に掛かった苦しみは大変な物である」と記されています。
重い、嵩張る、ゴミの始末に困る、さらに缶切りが無いと食べられないと言う欠点を持つ戦闘糧食T型ですが、レトルトで構成されたU型が登場してもなお採用され続けているのは単に伝統という理由ではなく、缶詰め最大の長所である抜群の保存性というところに尽きるでしょう。
自衛隊は戦闘集団であると同時に、災害時には日本の重要な災害救助部隊ともなる性格を持ち合わせているので、いざと言う時の災害に備えどうしても保存性の良いカンメシを一定量備蓄しておく必要があるからなのです。
実は戦闘糧食T型は製造されてから一年間は全国の各補給所にて保管され、2年目に駐屯地業務隊に回された後、そこでまた一年保管されます。その後3年目より1年間かけて各部隊の演習等で計画的に消費されていく事になり、つまり常時3年分の備蓄がされている事になるのです。
毎年陸上自衛隊では乾パンを含めた主食を140万食、おかず缶を約300万食調達しているので、いざと言う時にはこれらが被災者の元に届けられるわけですね。

余談ですが、缶メシは乾燥した冷暗所で保管すれば数十年は喫食が可能なのです。先日銀色の缶メシを喫食しましたがまったく問題ありませんでした。

内容紹介

(中身の試食レポートは随時更新予定)

注意)缶の大きさは写真を揃えるために比率を変えています。大きさ比較の参考にはなりりません。

DSP番号

状況

DSPの名称 制定年月日 最終改正年月日 DSPの概要等

DSPN5002D

小形乾パン

昭和52.03.30

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできる小型のビスケット。主な材料は小麦粉と砂糖
<最近の改正のポイント>
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・「材料」及び「品質保証」等での重複した規定を削除
・承認用見本の提出数を「製品8袋」から「製品6袋」に変更

DSPN5003C(1)

白飯缶詰

昭和52.03.30

平成13.06.28

常用の食糧として使用する長期保存のできる白米の缶詰。内地産水稲うるち玄米を精米し、蒸煮したもの
<最近の改正のポイント>
・最新のJISに適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5004C

赤飯缶詰

昭和52.03.30

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできる赤飯の缶詰。内地産水稲もち玄米を精米し、小豆を加えて蒸煮したもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5005C(1)

とり飯缶詰

昭和52.03.30

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできるとり飯の缶詰。内地産水稲うるち玄米を精米し、鶏肉等を加え味付けして蒸煮したもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5006C(1)

しいたけ飯缶詰

昭和52.03.30

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできるしいたけ飯の缶詰。内地産水稲うるち玄米を精米し、しいたけ等を加え味付けして蒸煮したもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5007C(1)

五目飯缶詰

昭和52.03.30

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできる五目飯の缶詰。内地産水稲うるち玄米を精米し、人参、ごぼう、油揚げ等を加え味付けして蒸煮したもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5101C

たくあん漬缶詰

昭和61.04.04

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできるたくあん漬の缶詰。昆布等を加えた調味液に干し大根を漬け込んだもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5102C

福神漬缶詰

昭和62.03.23

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできる福神漬の缶詰。混合野菜(大根、なすび、なたまめ等)を調味液に漬け込んだもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPN5105B(1)

牛肉味付缶詰

昭和61.12.12

平成14.07.08

非常用の食糧として使用する長期保存のできる牛肉の味付缶詰。牛肉をスープ、しようゆ、砂糖等の調味液を加えて味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・ 缶体の種類に「平3号2ピース缶」を追加

DSPN5106B(1)

ニューコンビーフ缶詰

昭和61.12.12

平成14.07.08

非常用の食糧として使用する長期保存のできるコンビーフの缶詰。牛と馬の塩漬け肉をほぐしてスープ、しようゆ、砂糖等の調味液を加えて味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・ 缶体の種類に「平3号2ピース缶」を追加

コンビーフベジタブル缶詰 調べましたが詳細がありませんでした。

DSPN5107B(1)

味付ハンバーグ缶詰

昭和62.03.23

平成14.07.08

非常用の食糧として使用する長期保存のできる味付ハンバーグの缶詰。混合練肉(牛肉と豚肉)にタマネギ、パン粉等を加え、しようゆ、砂糖等の調味液で味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・ 缶体の種類に「平3号2ピース缶」を追加

DSPN5108B

鶏肉もつ野菜煮缶詰

昭和62.12.16

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできる鶏肉もつ野菜煮の缶詰。鶏肉、鶏もつに板こんにゃく、たけのこ等の野菜を加え、サラダ油でいため、しようゆ、砂糖等の調味液で味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更 

DSPN5109B(1)

鶏肉野菜煮缶詰

昭和62.12.16

平成14.07.08

非常用の食糧として使用する長期保存のできる鶏肉野菜煮の缶詰。鶏肉に、さといも、ごぼう、たけのこ等の野菜を加え、しようゆ、砂糖等の調味液で味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・ 缶体の種類に「平3号2ピース缶」を追加

牛肉野菜煮 調べましたが詳細がありませんでした。

DSPN5110B(1)

ます野菜煮缶詰

平成1.03.31

平成14.07.08

非常用の食糧として使用する長期保存のできるます野菜煮の缶詰。ますに、たけのこ、にんじん、昆布等を加え、しようゆ、砂糖等の調味液で味付けしたもの
<最近の改正のポイント>
・ 缶体の種類に「平3号2ピース缶」を追加

まぐろ味付 調べましたが詳細がありませんでした。

DSPN5121B

ウインナーソーセージ
缶詰

昭和61.04.04

平成13.06.28

非常用の食糧として使用する長期保存のできるウインナーソーセージの缶詰。混合練肉(牛、豚及び鶏)の塩漬け肉に調味料を加え、羊腸に詰めて乾燥、薫製等の加工したものを食塩水に漬けたもの
<最近の改正のポイント>
・種類に「無彩色缶(缶体外面の彩色無し)」を追加
・最新のJISに適合
・最新の法令等に適合
・承認用見本の提出数を「製品8缶」から「製品6缶」に変更
・缶切の細部規定を取りやめ「機能・性能仕様」に変更

DSPについて)  防衛庁が装備し使用する物品を調達する場合において必要とされる調達物品の仕様(物品の形状、構造、品質、その他の特性、試験方法、検査方法その他のこれらの特性を確保するための方法又は装備品等の防せい方法、包装方法、表示方法その他の出荷条件をいう。)について定めたものを防衛庁仕様書と言い、その英語の頭文字をとってDSPと呼ぶ。


缶のサイズ比較


平一号缶 携帯缶 8号缶 ポケット3号缶 平3号缶 名称無し
内径98.9 高さ68.5 内径74.0 高さ50.5 内径65.3 高さ52.7 内径83.3 高さ30.3 内径74.0 高さ34.4 内径63.6 高さ30.7
白米
赤飯
五目飯
とり飯
しいたけ飯
牛肉野菜煮

鶏肉もつ野菜煮
ウインナーソーセージ 牛肉味付け
コンビーフベジタブル
ニューコンビーフ
ます野菜煮
鶏肉野菜煮
味付ハンバーグ
まぐろ味付 たくあん漬

福神漬

微妙にサイズが違うので、喫食後はこのように缶を一つにまとめてしまうことが出来ます。


平成17年より、新JIS規格変更にともない、缶のサイズが変わりました。

おかず缶はプレス製造になったので、リムは上方だけになりました。それにより缶をぴったり重ねる事が出来ます。
主食缶はサイズが大きいので、プレスではなく両面にリムが付いていますが、底面が少し絞ってあるので、やはりぴったりと缶同士を重ねる事が出来ます。

おかず缶の大きさが統一されたようです。 これにより今までの缶より容積が小さくなったメニューが多く、量が減ってしまいました。 缶の大きさの変更がないのは、平3号缶に入っていた「まぐろ味付け」のみ。 「たくあん漬」だけは逆に今までより量が増えましたが、缶の深さが減ったので、実際には20g程しか変わっていません。 ちなみにこの平3号缶サイズの缶に入った「たくあん漬」は1980年頃まで使われており、当時は1缶で2人前となっていました。
主食は缶の直径は同じですが、高さが1Cm近く低くなり、それに伴い内容量も減り、80gも重量が減っています。

缶の表記もかなり変わりました。 ぱっと見て気が付くのが文字フォントで、新型はゴシックの太文字になっています。
さらに良く見ると、新型には原料名や製造元どころか内容量すら省かれ、記載されていません。
(実際隊員個人が気にする内容ではありませんし、見る人もいないでしょうが)
全てDSCPで管理されているようです。

固形燃料


暖かい食事は兵士の士気に影響する事はご存知だと思います。 と言うわけで一応自衛隊にも糧食を温めるための固形燃料と言うものが用意されています。
しかし現職の方のお話を聞くと、米飯缶は直火では温められないし、おかず缶は小さくて火にうまくかける事が出来ない、それ以前に忙しい状況中さなか火を焚いて暢気に温食を用意している時間的余裕は無いので、まずこの固形燃料を使うことはないとか。
でもこの固形燃料、結構便利な使い道があるのです。
冬季の演習中、屋外で待ち時間がある時、待っている間はかなり寒い物、そんな時にこの固形燃料で暖を取る時に使え、非常に便利!
ただし、そのまま火を焚いて手をかざしても、体の一部が温まるだけですので、そんな時はポンチョで体をくるみ、ひざでの下に作った空間でこの固形燃料をたき暖を取るととても温かく、これをだるまストーブと言い待ち時間が長い時はたまにやるそうです。 
しかしこれは気をつけないと大変危険で、カンピンを焦がすと後で大変なことになるので、蓋を微妙に調節して火力を弱めるのがコツだとか。
そうすると汗をかくくらい温かく過ごせるそうです。