自衛隊戦闘糧食II型

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自衛隊では昭和56年頃より、それまでの缶を主体とした戦闘糧食に変わる新時代の戦闘糧食を、防衛庁技術研究本部第二研究所で開発、研究を進めていました。 缶詰糧食の欠点を補い、食生活の豊かになった現代のニーズに合うようにメニューのバリエーションを増やす事を目的とし、昭和62年、遂に12種類の試作品を完成させました。 試作品は洋食6種類、和食6種類からなり、 当時民間でも一般的に普及しだしたレトルトパックを利用する事により、軽量で省スペース、かつ製造が簡易、おまけに缶切りも要らず、ゴミもかさばらないな画期的な糧食が誕生することになります。 
同時代、他国でも同じようにレトルトを利用した糧食を開発していましたが、これは特殊環境下で、ある目的を持って行動する兵士にとってはレトルトの持つ画期的特長は非常に意味のある物だったのです。
ちなみにそのときに開発された試作糧食の内容ですが、例えば洋食(メニューNo.3)は、主食のビスコット(これはパンをラスク風にしたもの)副食のウインナーソーセージ、ポテトサラダ各1パック、スプレッドであるリンゴジャム さらに顆粒状のオレンジドリンク。 洋食(メニューNo.4)では 主食のビスコット(フルーツ風味) 副食のスクランブルエッグとチリコンカーン各1パックずつ、リンゴジャム 顆粒状のレモンティー。  さらに和食(メニューNo.9)は、主食の赤飯と白米 副食のマグロの照り焼き、切干大根の炒め煮、 粉末味噌汁、 福神漬け。 ついで和食(メニューNo.10)だと主食の白米と五目飯 副食の鰯の煮付け、筑前煮、わかめスープ、福神漬けという組み合わせでした。
後に記す現在採用されているメニューと比べると、かなり豪華であった事が分かりますね。 結局この試作品は全国の各部隊でテストされた結果そのまま採用される事はなく、手軽にカロリーが摂取できるドリンク類やスプレッド類がが廃止されてしまったのは実に惜しい。 しかし今でも少しずつ改良が加えられているので、これから国連活動にも積極的に参加しようとしている現状を踏まえ、数年後には国連軍共通糧食になるような豊富なアクセサリーやドリンク類も付く戦闘糧食III型が登場するかもしれません。
ちなみにこの試食品にはあまり採用されなかったのですが、この時フリーズドライ技術や、パンなどをその出来立ての状態のまま長期保存する技術もかなり研究されたようです。 野菜等を新鮮な状態のまま元に戻す事が出来るフリーズドライ食品や上記のパンなどは潜水艦や艦艇などで現在上手に利用されていると聞きます。
さて、話を新型パック糧食に戻しますと、試作品のテストの結果、結局洋食セットのビスコットは腹持ちが悪いのと日本人の食生活に合わないという理由から採用は取りやめ、その代わりハンバーグなどのご飯のおかずに合う洋食メニューが選ばれるようになりました。 しかしどうしてもご飯系パックは喫食前に加熱する必要があり、緊急の出動の場合に配食が間に合わないと言う理由から、試作メニューNo.3を改良した大型乾パンセットというメニューが採用される事になりました。 それ以外のメニューは米飯を主食に置き、副食は2品から1品へ変更され、現在の形にかなり近い原型が出来上がってきます。
昭和60年ごろに改良型の戦闘糧食※型(※の部分にはアルファベットが入る)が登場し、遂に平成2年、軽包装糧食が正式採用される事となりましたが、結局テストの結果、パックの糧食は缶詰の糧食に比べ保存性で劣る事が分かり、今までの缶詰糧食も有事に備えての備蓄と言う意味からそのまま継続採用する事で、今までの缶詰糧食をI型とし、新軽包装糧食をII型として、両者を使い分けていく方針に決まりました。
I型は24個入りの箱に「非常用糧食」と書かれていることからも分かります。(ちなみにII型の箱にはもちろん軽包装糧食と書かれています。保存期間は1年)

軽包装糧食と言えば、戦闘糧食II型も米が主食と書きましたが、その米パックも工夫されていて、I型の場合、米飯缶は一缶でほぼ2合入っていて、開封したら一気に食べきらねばなりません。 しかしII型の米パックは1合づつパックされて1食で2パック支給されいるので、状況に応じて食べるペースを調節出来、いざとなったら少しづつ食い延ばす事も出来ます。 また2パックのうち1パックづつ種類を変えて配給できるので、飽きがきにくく、薄型のパックは携帯に便利なだけでなく、加熱もしやすく湯銭時間が少なくてすみます。(II型の25分に対し、半分以下の10分でOK)
軽包装の軽は缶より簡単な包装であると言う意味と、文字通り軽いと言う意味があり、1食分が400g〜600g程度、なので少しでも負荷を減らしたい普通科に優先して配給されるそうで、(車両での移動が多い科ほどI型の割合が多いと言う事) でも軽包装といってもかなり包装は丈夫で、対衝撃や引張強度の基準は民生品に比べると非常に過酷な試験をパスしています。
ちなみに良く勘違いされている事で、パック飯は一度ボイルしてしまうと3日以内に食べないと駄目になると言われていますが、基本的に密閉さえ保たれてさえいればすぐに悪くなる事はありません。 もちろん茹でる事によりシール部分が緩むとか、温度が高い状態での保管は中身の劣化を早めるのは事実ですが、元々製造段階で一度高温スチーム殺菌にかけられているので、再度茹でても同じ事なのです。  

下に戦闘糧食II型採用当時のメニューを記します。

主食 副食
クラッカー2パック
(1989〜
ウインナーソーセージ、ポテトサラダ粉末スポーツドリンク、蜂蜜
大型乾パン2パック
(1995〜
フランクフルトソーセージ、ツナサラダ、粉末スポーツドリンク、蜂蜜
白米、五目飯 ハンバーグ、ポテトサラダ、高菜漬け
白米、赤飯 牛肉野菜煮、即席味噌汁、はりはり漬け
豆ご飯、山菜飯 やきとり、即席味噌汁、はりはり漬け
白米、2パック ビーフカレー、ツナサラダ、福神漬け
とり飯、赤飯 鮭塩焼き、ポテトサラダ、即席吸い物
白米、山菜飯 サバ生姜煮、ポテトサラダ、即席吸い物、高菜漬け
白米、豆ご飯 筑前煮、即席味噌汁、はりはり漬け
ドライカレー、五目飯 フランクフルト、即席わかめスープ、福神漬け
白米、ホタテピラフ ミートボール、即席わかめスープ、高菜漬け
白米、2パック 牛丼、即席味噌汁、福神漬け

初期型戦闘糧食II型
レポート

戦闘糧食II型は戦闘服のズボンポケットに1食分が収納できるサイズになっているのですが、実際にはズボンポケットに入れることはないらしく、なぜならば最初のうちは良いのだけど、長時間の行軍の際、足が擦れてかなり痛くなるためらしいです。 基本的に背嚢に詰め込むことになるのですが、糧食は規定で3日分を携帯する事が義務付けられているので、纏まるとかなり重く、出来るだけ背嚢の上の方に詰め込むようにします(1食分はすぐに取り出せるように背嚢のポケットに収納する)。 しかし寒い時期は保温の意味から軽い衣類にくるんでしまっておくため、その限りではありません。 寒い時期と言えば、だれしも食事は少しでも暖かいものを食べたいと思うもので、隊員はそれについてもかなり色々と工夫しているようです。 その代表的な方法が体温で温めるというやり方で、背嚢の背中に近い部分に収納したり、戦闘服の内側、お腹とベルトの間に挟んだりして少しでも温めようと努力します。 それ以外に良く行われているのが、粘着テープつきの使い捨てカイロを利用し、タオルで包んでおくという方法で、長時間のあいだかなりの熱を発するために寒冷地で演習する隊員の間ではもっぱら良く使われていた方法だとか。
米軍のMREには温かい食事が摂れるようにFR(無火式)ヒーターが付属しているのは有名ですが、自衛隊にも遂に2000年10月より簡易加熱剤というものが登場することとなります。 自衛隊方式の簡易加熱剤は、今までも隊員の間で一般的に利用されていた使い捨てカイロを改良し、最高温度は実に90度近く、しかも60度以上を4時間近く保ち続けます。米軍式の加熱剤は水を反応の触媒として利用しているために反応は早いのですが、加熱中は横にしたり持って移動する事が出来ません。 また反応時間が短いので保温すると言う事が出来ません。これはMREのメインミールに汁物が多いと言う事が関係しているのですが、自衛隊の簡易加熱材はおかずパックを温めるというより、もっぱら冷えてβ化すると食べにくい米飯を温める事に主観をおいているため反応は遅くても長時間発熱し、持ち運び可能な酸化鉄方式を採用したのでしょう。 なんせ米パックは美味しく食べるには10分以上の加熱が必要となりますから。 ただしこの簡易加熱剤で米が完全にβ化している状態から加熱して、美味しく食べられるα状態にするまでには、1時間かかるそうです。 
この簡易加熱材は1個が13.2Cm×20Cmで、米パックより一回り大きく、2個の米パックを温めるのに、交互にサンドイッチして3個必要になります。 (製造は使い捨てカイロで有名な桐灰科学株式会社。)
 最高温度の高い加熱材はカイロとしての使用を禁止されています。


簡易加熱剤レポート

自衛隊のレトルトパックはポリエチレン等の3重または4重構造になっていて、おかずパックにはアルミ箔の層があり、光を完全に遮断しています。 主食パックについては白米、赤飯、五目飯などは透明パックになっていて、一部を除きOD塗装され、中身を確認できるようになっています。 しかしドライカレーや炒飯、ピラフなどの油を使う米料理には光が遮断できるアルミ箔層のあるパックを使っています。 一部情報では新型の米パックは、白米なども全て遮光パックタイプに替わったとも聞きますが、今の所まだ確認されていません。(手元に今年製造の米パックもありますが、透明パックのまま)
ちなみに試作版の米パックは、表面には塗装がなされず、完全に透明になっていました。
1988年ごろ記録として撮影した、試作版軽包装糧食

パック飯といえば、カンメシと違い開封には道具を使わず、端の切込みから袋を裂くように開く事が出来ます。 しかしその際完全には引き千切らず、端をつなげたままにする様に指導され、これは不用意にゴミを残さないための配慮だとか。 隠密裏に行動し、痕跡を一切残さない事が普段から求められていて、それゆえにゴミが嵩張らないパック飯は隊員からも好評を得ているのです。

他国の戦闘糧食にはスプーンなどが付く事がありますが、パックで纏められたII型でもスープン等は付いてきません。 箸文化の日本人はその辺の枝を削って箸を作るのも簡単ではありますが、 もっぱら行儀は悪いですけど、袋から直接絞って食べるようです。 これはII型になって出来るようになった技ともいえますが、もともとオニギリなどは手で食べる習慣がある日本人には、パックから直接米を飯を食べる事も特に苦ではなく、オニギリよりむしろ薄くて食べやすいかも。 とはいえ油でパラパラになったピラフ系や汁の多いおかず類は結構食べにくそうで、 カレーなんかは米と交互に食べて口の中で混ぜて食べるそうですし。
余裕がある時はパックを寝かせた状態で面の部分を四角く適当に切り抜き、そこにおかずを流して食べたりするそうです(カレーや中華丼、牛丼など)

戦闘糧食II型は採用されてすでに10年以上になりますが、その間にも少しづつ改良が加えられています。

2000年以降のメニュー

主食 副食
クラッカー ハムステーキ、ポテトサラダ、卵スープ
白米、2パック ハンバーグ、ポテトサラダ、高菜漬け
ドライカレー、五目飯 フランクフルト、即席わかめスープ、福神漬け
白米、2パック ビーフカレー、ツナサラダ、福神漬け
白米、ドライカレー チキンステーキ、ジャーマンポテトサラダ、卵スープ
白米、2パック 中華丼、キノコスープ、メンマ
白米、五目炒飯 中華風肉団子、中華風わかめスープ、大根キムチ
白米、蟹炒飯 酢豚、中華風わかめスープ、大根キムチ
白米、2パック 牛丼、即席吸い物、福神漬け
豆ご飯、山菜飯 やきとり、油揚げの味噌汁、はりはり漬け
とり飯、赤飯 鮭塩焼き、ポテトサラダ、油揚げの味噌汁
白米、山菜飯 鯖生姜煮、ポテトサラダ、即席わかめスープ、高菜漬け
白米、山菜飯 筑前煮、即席吸い物、はりはり漬け
白米、赤飯 マグロステーキ、きざみ昆布煮、油揚げの味噌汁

上記メニューの主、副食組み合わせは、在庫の状況により他の種類に変更される場合もあります。

以前のメニューと比べると、メニューが数種類増えている事がわかります。 しかし隊員に不評だったのか消えていったメニューもかなりあり、まず大型乾パンパックが廃止になった事に気が付いたと思います。その代わりにクラッカー食パックが新しく採用になりました。 あと廃止されたメニューでは、主食のホタテピラフ、副食の牛肉野菜煮とミートボールなどですが、ミートボールは中華風肉団子に姿を替えたようです。 ここでまたまたお気づきでしょうが、和、洋食に加え、中華も数種類採用されるようになり、中華丼と酢豚も新しくお目見えしました。 主食の五目炒飯と蟹炒飯も新しい中華メニューの一つです。 それ以外にチキンステーキとマグロステーキも新しく採用されたのですが、何故かビーフステーキやポークステーキは未だ出てくる気配もありません。(コストの問題か?) 副食の中身も多少変更が加えられていて、例えば味噌汁は登場初期、顆粒だったものが、油揚げも入るフリーズドライ方式になりました。 またポテトサラダにも新しくジャーマンポテトサラダというものが採用されています。それ以外に新しく登場した付属メニューは、中華メニューに付属するメンマや大根キムチ、わかめスープ(和風と中華風がある)、それに卵スープやきざみ昆布煮などなど。 結構新しいメニューが加えられていっている事が分かりますね。

戦闘糧食 II 型、内容紹介
(中身の試食レポートは随時更新予定)

クラッカー、乾パンパック
名称

クラッカーパックについて

納入業者
初期型
クラッカー食セット
(1990年納入)
株式会社伊勢丹
大型乾パンセット
(1995年納入)
株式会社伊勢丹
クラッカー食セット
(2001年納入)
日本ハム株式会社


主食パック
名称 パックの表示 確認された製造会社
下記製造元以外にも
数社が製造に携わっています
白米 日本ハム株式会社
赤飯 明星食品株式会社
豆ご飯 フクシマフーズ株式会社
山菜飯 フクシマフーズ株式会社
五目飯 フクシマフーズ株式会社
とり飯 フクシマフーズ株式会社
ドライカレー フクシマフーズ株式会社
ホタテピラフ 東洋水産株式会社
(フクシマフーズ)
五目炒飯 フクシマフーズ株式会社
蟹炒飯 フクシマフーズ株式会社
注、フクシマフーズとは東洋水産グループで、 市販品では「マルちゃん」ブランドのパック飯と同じものです。

副食パック
名称 納入業者
ビーフカレー 丸紅株式会社
ハンバーグ 丸紅株式会社
フランクフルト 国分株式会社
チキンステーキ 日本ハム株式会社
中華丼 株式会社ボムス
中華風肉団子 日本ハム株式会社
酢豚 国分株式会社
牛丼 日本ハム株式会社
やきとり 国分株式会社
鮭塩焼き 丸紅株式会社
鯖生姜煮 丸紅株式会社
筑前煮 丸紅株式会社
マグロステーキ 国分株式会社