SWATとは、Special Weapons And Tactics「特殊火器戦術部隊」という名が示すとおり、通常の警察力では対処できない凶悪都市犯罪に対抗すべく組織された特殊部隊であり、警察内において特に高い能力を持つ者だけが選抜され、特殊な装備と銃器、常に高度な訓練により高い技術磨き続けるエリート集団である。 映画「スピード」(1994FOX キアヌ・リーブス主演)や、その名もずばり「SWAT」(2003ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント サミュエル・L・ジャクソン主演)などを見てご存知の方も多いだろう。 
SWATの隊員は特殊な作戦に従事する者が多く、プライベートで凶悪犯から狙われる事もあるため、通常自分がSWATの隊員である事を明かさない事が多い。 また敵に手の内をさらす事になりかねないので訓練が公開されることもあまり無いだろう。 そんな訳で映画やテレビでの活躍を目にする事はあっても、本物の隊員の実際の訓練を目にする事はあまり無いと思う。

こんな事って!
我々には信じられない事が起きた! 今回のLA行きはSWATの取材ではない。 当時進行中のあるプロジェクトに必要な写真撮影のため、ロス在住のコレクター宅にお邪魔したのだ。 撮影の日程は6日間だったが、もしもスムーズに撮影が出来ない事も考慮し、最終日は予備日として予定を組んでいた。 なんとか順調に撮影は進み、予定通り撮影を終えた我々は余った一日を射撃を楽しんで過ごそうと、GUNショップにて実弾をたんまり買い込んだのであった。
さて、フリーウエイのラッシュを考慮し、早めに出発した我々は8時過ぎには目的地である射撃場に到着した・・しかし! なんと緊急の工事があると言う事で、射撃場は急遽クローズされており、ココでは撃つ事が出来ないと言う!! 仕方ないので弾を買ったガンショップで貰った射撃場マップを調べ、ココ以でライフルが撃てそうなB射撃場へ念のために電話を入れてみるも、なんとB射撃場今日と明日が休みだと言う。 僕は明日には帰らねばならないと言うのに、こんな事って!! しかしココまで来たらどうしても撃ちたい! そこで一軒どうしても電話が繋がらないC射撃場があるので、もしかしたら9時オープンなのかもしれないと望みを掛け、とりあえず行ってみる事にしました。
C射撃場に到着したのは9時過ぎ、 どうやら射撃場自体は開いている様子に安堵しながら早速申し込みをすると、係員から「残念だけどライフルはココでは撃てないよ」との事。 Oh!こんな事って!! しかしココまで来たらハンドガンだけでも撃ちたい!  ただしライフルを楽しみにして弾をお買い込んでいたので、ハンドガンの弾は50発しか購入してこなかった為、あっという間に撃ち尽くしてしまい、時間が余ってしまった。 さあどうしよう?  そこで、実はこの射撃場はかなり広いので、それじゃあ他のレンジを覗いて時間をつぶそう、という事になった。

S.W.A.T
奥のレンジの方に進んでいくと、なにやら警察車両が何台も停まっており、中には覆面パトカーも確認する事が出来た。 一体このレンジの中で何が行われているのだろう? 興味を持った我々は開いていた扉からそっと中を覗いてみたのだが、 驚いた事にそこには!重装備に身を固めた、まるで兵隊のような連中が射撃準備をしている? しかも彼らの背中には「POLICE」の文字が・・もしや?と良く見てみると、肩のワッペンに紛れも無く「S.W.A.T」の文字が!
驚くと共にこれはチャンスかも!と、早速駄目もとで訓練の撮影が出来ないか交渉をしてみる事に!
 もちろん簡単に許可が出るわけ無いと思っていたが、一応隊員に聞いてみると、責任者のような人が言ってくれた。 
暫く待機していると、なんと「OK、今回は特別だ」と、許可が出てしまったのだ!! これは驚くべき奇跡だ!!
こんなチャンスはめったにない。 さっそく中に入れてもらい、いくつか取材に関する注意を聞く。 もちろんこれは良く聞いておかないと自分の身の危険にも関わるし、邪魔をして途中で放り出されてはたまらない。 なにより折角許可してくれた彼らに申し訳ないのでしっかり聞いた。

さて、隊員たちも勢揃いし、円陣を組んでブリーフィングをしている。 ここである事に気が付いた。 実は彼らの装備やユニフォームに統一性が無い事に。 しかし全員がバラバラと言う訳でもなく、あるグループごとに纏まりがあることにも気が付いた。 
聞くと、実は彼らはロスアンゼルス郡の中の色々な市のSWAT隊員達で、これから合同で訓練をしようと言うのだ。


SWATはもともと70年代ロサンゼルス市警察で発足したのが始まりだと言われる。 その後、アメリカ大都市を中心に各地の市警察でもロサンゼルス市警察を手本とした特殊部隊組織を置くようになり、有事の際に備えるようになったのだ。  例えば映画などで出てくるSWATが身に着けるベストにLAPDの文字を見ることがあるが、ロサンゼルス・ポリス・デパートメントはロス市警の事である。 またビバリーヒルズの場合、映画「ビバリーヒルズ・コップ」(ビバリーヒルズ市警の刑事)と呼ばれるように、市によって管轄が違うため、近くで起きた事件であっても管轄外であればLAPDのSWATは対処できないのである。
今回参加していたのはPASADENA.・P・DやCOSTAMESA・P・D NORTH COUNTY・P・D   POMONA・P・D  GAREDN GROVE・P・DなどのSWAT隊員たちだった。 この訓練の最中も任務についている隊員や、待機していたり夜勤明けなどで休暇中の隊員もいるであろうから、この日は各市から隊員の一部4〜5名程度のチームが派遣されてきているようだ。 
今回訓練を受けている隊員の中には、女性SWAT隊員も見ることが出来た。 しかも一人は黒人である。 映画SWATでは女性と言う理由でSWAT隊員になれなかった女性警官が出てくるが。 実際には実力さえ認められれば女性でも隊員として抜擢されるようだ。 
彼女の訓練の様子も観察したが、決して屈強な男性隊員に劣るものではなかった。 彼女が使う銃が取り回しの軽いMP5ではなく、M4カービンであることにも注目したい。
隊員は数人のインストラクターにより細かい手ほどきを受ける。 銃の構え方はもとより、スタンディングポジション、射撃時の体勢、射撃後の警戒態勢まで一瞬足りと目を離さない。 
勢い良く排出されるカート。 こんな間近でフルオート射撃を拝めるのは、日本ではそう無い事だ。 もちろんアメリカ人でさえなかなかこの光景には出くわさないと思う。 ましてやSWATの訓練にお邪魔するなど、到底不可能な事である。
これは薬室内で火薬が燃焼している瞬間を捉えた、珍しい写真だ。 
こちらも銃口から薬室の燃焼ガスが噴出す瞬間を捉えた珍しいショット。 さすがに弾は早すぎて写っていないが。

こうやって見るとMP5系はカートがかなり遠くまで飛ぶ事が分かる。
的までの距離は結構近く、室内での撃ち合いを想定したものだと思われる。  撃ち終わった後もあとも緊張を緩めず、軽く銃口を下に下げた状態で左右を警戒する。 この時も当然頭だけを動かすのではなく、上半身全体を振り、目線に脅威が現れた時は素早く銃口を持ち上げて瞬時にターゲットに命中弾を浴びせるように訓練を積むのだ。
的の後ろは土手になっており、的を貫通した弾が激しく砂埃を上げる。 あまりにも距離が近い為、小石に当たって兆弾して、いくつか僕の所にも跳ね返ってきた。 もちろん大怪我をする事は無いほどパワーは落ちているが、コレがコンクリートや鉄の壁に囲まれた室内であり、自分が人質になったシチュエーションを考えるとぞっとする。
地面を良く見てみると、空薬莢に混じって未使用弾もゴロゴロ落ちている事に気が付くが 雷管に傷が無い事から、どうやらこれは不発弾が強制排出されたものではなく、故意に抜かれた弾だと分かる。 
彼らは完全に脅威が去るまで、マガジンに数発弾を残して撃ち尽くさないよう訓練している為、状況が終わった時にも薬室に弾が残っているのだ。
しかし彼らはプロである。安全の為に決して銃に弾を込めた状態では持ち歩かないので、射撃が終わればその場でマガジンを抜き、コッキングレバーを引いて薬室の弾を抜いてしまうのだ。
さて今度は場所を替え、密集隊形で各々標的を狙う。 撃ちながらインストラクターの指示に従い左右に動いたりもしつつ この状態で兎に角撃ち続けるのだ。 コレだけの人数で同時に撃ち始めると、それはもう物凄い迫力だ! 映画では決して味わえない本物のサウンドに暫し酔いしれる。
さて、下のgif動画に注目していただきたい。 これは弾を撃ちつくした時にサイドアームに切り替える瞬間を連写で捉えたものである。 一連の動作がスムーズで、物凄い早業であることが分かるだろう。 相手に拳銃で一発撃ち込んだ後、素早く身をかがめ、マガジンチェンジを行っているのを見て欲しい。 もちろん空のマガジンは手に持ったままだ。 
訓練ではあっという間に弾薬を消費する。そして空き時間に各々マガジンに弾を込めるのも各自で行う。 
左の写真のダンボールには一箱につき9mmと45口径の50発入りが10箱づつ、計500発が入っており、9mm弾は2箱あるから1000発も用意されているわけだが、なんとこれは一人の隊員に支給されている量だ。
おそらくこの隊員はメインアームにMP5を、サイドアームに45口径の拳銃を使用しているのであろう。
しかし、コレだけ用意された弾の量でも、数時間のうちに使い切ってしまうのだ。
日本の自衛隊員や警察官から見ると、なんと羨ましい・・

たまに撃つ、弾が無いのが、玉にキズ・・・
この後、隊員はガスマスクを装着して、室内を模した状況で突入訓練を行うと言うのだが、スタングレネードを使用する危険な訓練である為、プロテクターの無い我々はこの訓練を見学する事が出来なかった。 誠に残念である。  どうやら手前の衝立が入り口と想定され、ここからスタングレネードで敵を攪乱し、チームで突入すると思われる。 奥の標的は左右に動くように出来ており、 それを実弾で撃つのであるから、確かにかなり危険な訓練だ。 
名残惜しいが、ここまでで我々のSWAT訓練潜入は幕を閉じるのであった・・
最後に隊員達の装備を紹介しよう。 市警によって各々違いがあることが良くわかる。 コレを参考にしてゲームでのコスチュームを考えてはどうだろうか? 
市警察によって各々装備が違う事が分かるであろう。 このように色々な市警察のSWATが集まって装備を見比べられる機会もあまり無いので、各々特徴が分かり非常に興味深い。

さて、銃に取り付いているオレンジ色の輪はなんだと不思議に思っている人もいるだろう。
あれは先が棒状になっており、薬室内に差し込んであるのだ。 つまりアレが刺さっていれば薬室内に弾は残っていないと一目で分かる安全装置のようなものだ。
最後になったが、SWAT諸君のレーション? ではないが、かれらのスタミナの元を紹介しよう。
 
これは配給品ではないから、レーションじゃありませんね。
全体に力が軽く抜け、腰を落として銃を構える隊員達。
この姿勢を見るだけで、彼らの錬度が分かると言うものだ。